Psyche Game Jam 2024でゲームジャムの世界に飛び込む!

 

 
 

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あなたを動かす原動力とは何ですか? 締め切り?責任感?それともコミュニティ? ゲーム開発の世界では、この三つすべてを活用した特別なイベントがあります。その名も「ゲームジャム」です。ゲーム開発を始めたばかりの方にとって、ゲームジャムは限られた時間の内でゲームを制作し、自分がどこまでやれるかを試す絶好の機会の場です。ゲームジャムは誰でも主催できるため、Harmony Frontiersでは2024年4月1日から5月31日にかけて独自のゲームジャム「Psyche Game Jam 2024」を開催しました。

アイデアが持ち上がったのは2023年6月のことでした。貢献したいと考えているコミュニティとより深くつながる方法を模索していた時です。私はデジタルアーティストと同時にゲーム開発者でもあるため、これまでに他のゲームジャムに参加し、ビジュアルノベルの共同制作に携わりました。その過程で、ゲームジャムを主催することの労力や意義を学び、Harmony Frontiersでも十分実現可能だと確信しました。また、評価のないゲームジャムであれば現在進行中のプロジェクトに大きな負担をかけることなく運営できます。さらに、このイベントを「メンタルヘルス啓発月間」と重ねることで、私たちが大切にしているテーマに貢献できるのではないかと考えました。

ジャムの開催期間は4月初めから5月末までの2か月間とし、参加者が時間に追われることなく自由に取り組めるようにしました。私たちは、このイベントをリラックスした雰囲気で開催し、メンタルヘルスをテーマにしたストーリー重視のゲーム制作を促進することを目的とします。ジャンルは問わず幅広く受け入れるつもりでしたが、Otome JamTrans Representation Jamといった著名なビジュアルノベル系ゲームジャムからインスピレーションを得ていたため、2か月間という期間が適切だと考えました。ビジュアルノベル以外のゲームジャムと比べるとこの期間は長いほうだと後から気づきました!

このような背景とチーム内で合意を得たうえで、開催準備のスケジュールが作成されました。万が一締め切りを延長する必要が出た場合に備え、多少の余裕も持たせました。まず取り組んだのは、Harmony FrontiersのItch.ioアカウントの開設です。シンプルな作業ですが、ジャムを開催する際に空のアカウントが表示されるのを避けるため、事前にしっかりとプロフィールを整えて土台を作ります。次に、毎年再利用できるロゴのデザインを決めました。名前・コンセプト・カラーパレットを決めた後、Lemmasoftを通じて見つけたアーティストのYuukiPuddingさんに依頼しました。彼女とのやり取りは非常にスムーズで、何度も修正を重ねながらも最終的にデザインを仕上げることができました。並行して、ジャムのプロモーション用キービジュアルの制作にも取り掛かりました。マスコットキャラクターには、私たちのWebコミック『Ambivalence』の登場キャラクターであるNIKOLAYを選びました。彼はコンピューターサイエンス専攻の大学生という設定なので、ゲームジャムのコンセプトに合うと考えたのです。衣装デザインは、いつもお世話になっているデザイナーのRosariyさんに依頼し、ロゴの雰囲気に合う衣装を作っていただきました。完成したデザインはキャラクターにもイベントの雰囲気にもぴったりです。次に、キービジュアルのイラスト制作を依頼するアーティストを探すため、DevTalkに募集をかけました。多くの応募がありましたが、最終的に独自のアートスタイルを持つCrowleeさんにお願いすることにしました。

DevTalkのDiscordサーバーは、ビジュアルノベルに取り組むゲーム開発者にとって素晴らしい情報源ですが、私たちはPsyche Game Jam専用の居場所を提供するために、ジャムの発表前に独自の公開Discordサーバーを開設することを目指しました。ここには、サーバー内に専用のカテゴリを追加し、エントリーリンクの共有、チーム募集、カジュアルなゲーム開発の雑談、アイデア出し、制作中の作品(WIP)の共有、サポートの相談、さらには通話しながら共同作業をしたい開発者向けのボイスチャンネルなどを設けました。このサーバーは1月に公開され、Psyche Game Jamは、ユーザーが選択できるオプトイン方式でアクセス可能になる予定です。

ジャムのページもItch.io上で整備し、以下の4つのセクションに分けました:

  1. イントロダクション(テーマ、期間、目的について)

  2. ルール(コンテンツ制限、開発プロセスの制約、使用可能な素材、投稿作品の権利など)

  3. コミュニティリソース(開発をサポートする情報)

  4. クレジット(関係者の紹介)

2の「ルールに」ついては、他のストーリー重視のゲームジャムを参考にし、特に重要なポイントを整理しました。具体的には、投稿可能なコンテンツの種類、開発プロセスに関する制限、許可される提出形式、アセットの使用ルール、ガイドライン違反時の削除権、最終的な提出作品の扱い、著作権の帰属などを明確にしました。また、3の「コミュニティ」セクションでは、開発のサポートを信頼できるツールを通して受けられる場所にしました。具体的には、私たちのDiscordサーバー、ジャムページのコミュニティタブ、DevTalk Discordサーバー、Lemmasoftフォーラムなど。後者の2つは主にビジュアルノベル向けのコミュニティですが、今回のジャムはストーリー重視のゲームが対象であるため、参考にできるリソースの一つだと判断した上で乗せることにしました。

Psyche Game Jam 2024のプロモーションアートワーク。 ロゴデザインはYuukiPudding、イラストはCrowleeが担当しました。

2月上旬にSNSでジャムの告知を行いましたが、それだけでは十分ではないと分かりました。 誰も知らないイベントには参加できませんよね?そこで、ゲーム開発コミュニティでも話題にしつつ、SNSで追加の投稿を行いました。その結果、ジャム開始時点で約42名の参加登録がありました。これは確かに嬉しいことではありましたが、登録数がそのまま最終的な提出数に繋がるとは限りません。実際、「参加」ボタンを押すのはあくまで興味を持った人の数を示すものです。多くの人が「気になる」と思って登録するものの、実際さまざまな事情で参加できなくなることもあります。また、参加しても期限内に完成できないことも珍しくありません。時間管理のミス、作業範囲の見誤り、チームメンバーの離脱など、要因はさまざまです。そのため、ゲームジャムでは未完成でもデモ版や初期バージョンを提出することを推奨することが多いです。特に競争型の短期間ジャムでは、完成しなくても提出することが勧められます。でないと、参加者がまだ終わってないからと提出せずに諦めてしまうかもしれないからです。

私たちは、「2~3本でも提出があれば十分」、それ以上なら大成功、1本でもあれば及第点という気持ちでこのジャムに挑みました。最悪の場合、0本だったらどうしようとも心配していましたがそうなったら、その時に対処すればいい。最終的な結果は私たちではなく、参加者次第です。だからこそ、私たちはコミュニティタブやDiscordサーバーを通じて、可能な限りのサポートを提供することに注力しました。

regen=QによるPsyche Game Jam 2024の投稿作品『this is a platform about blue』のスクリーンショット。 本作は、小さなロボットを操作し、次のバッテリー補充地点を目指して登っていくものです。

Psyche Game Jam 2024が終了した時点で、エントリーされた作品は1つでした。それが、 this is a platform about blueregen=Qさんによるデモ作品です。このゲームは挑戦的なゲームプレイを提供するだけでなく、レベルを進めるごとに自閉スペクトラム症(ASD)とそれに対する社会的な偏見についてのコメントが随所に挟まれています。実際にプレイしてみたところ、難関を乗り越えるたびにストーリーをもっと読みたくなり、最後まで挑戦し続けました。プラットフォーマーが好きで、自閉スペクトラム症について知りたい方には是非試してみることをおすすめします!

ジャムが無事終了した今、次回のPsyche Game Jamをより良いものにするために、改善点を検討していきたいと思います。まず、見落としていた問題のひとつが、 Itch.ioのゲームジャムページにイベントが掲載されるのが開始の一ヶ月前を切ってからになってしまったことです。このページは、参加者がジャムを見つける主要な手段のひとつです。私たちは当時、それが通常の流れだと思い込み、掲載後に参加者数が一気に増えたことを喜んでいました。しかし、ジャムページを公開して数週間経ってもカレンダーに表示されない場合は、Itch.ioのサポートチームに問い合わせ、審査状況を確認するのが懸命だと学びました。

もうひとつ直面した課題は、SNSの更新用のプロモーション画像が不足していたことです。同じビジュアルを何度も投稿するのは避けたかったものの、他に使える素材がほとんどありませんでした。テキスト投稿が可能なプラットフォームなら多少は工夫できますが、Instagramのフォロワーにも情報を届けたかったため、なんとか使えそうなビジュアルをかき集める必要がありました。今後は、より多くの開発者にイベントを知ってもらえるよう、マーケティングの手法を広げ、より効果的な情報発信の場を探していきたいと考えています。

また、Psyche Game Jam 2024は他のストーリー重視のゲームジャムと日程が重なってしまい、参加を検討していた方々から「タイミングが合わない」との声が多く寄せられました。私たちのジャムでは他のイベントとの重複エントリーを許可していたものの、どうしても競争になってしまう感覚が拭えませんでした。この対策として、次回以降はジャムページをより早い段階で公開し、開発者のスケジュールに組み込みやすくすることを目指します。また、指針を見直し、複数のジャムへの同時エントリーを歓迎するスタンスをより明確に示すのも有効かもしれません。他のジャムのルールを順守していれば、エントリーを推奨することに問題はないと私たちは考えています!

最後に、比較的シンプルな改善点として、ジャム期間中の参加者へのチェックインを増やすことを考えてます。これは、Discordサーバーで週ごとのリマインダーを設定する、あるいはItch.ioのゲームジャム設定を利用してメールを送信するといった簡単な方法で実施できます。 ただし、重要なのは、送るメッセージに価値と目的があること。また、配信頻度には一定の制限を設けることも大切です。通知が多すぎると、かえって負担に感じられてしまいますからね。

こうした経験を経て、ゲームジャムを主催する価値はあったのか?と聞かれたら、答えは間違いなく「もちろん」です! 結論、当初目標としていたことはすべて達成できました。もちろん、理想的な形とは言えない部分もありましたが、それでもゲーム開発コミュニティとのつながりを深め、メンタルヘルスをテーマにしたゲーム制作を促し、ポジティブな影響を与えることができたと感じています。 また、締め切りに間に合わなかった方々からも、「このイベントのおかげでゲーム制作を進めるきっかけになった」との声をいただきました。最後まで完成に至らなかったとしても、その挑戦と努力は十分に価値があるものですし、私たちは彼らの頑張りを誇りに思っています。


作: Mx. RuK
編集: Hanako, Stardust Daydreamer
スエーデン語翻訳: Nega Nexus
日本語翻訳: Jamiettt

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