ボーカルシンセシスと精神への影響
ご存知かもしれませんが、今ではボーカルシンセシステクノロジーは音楽業界で大きく成立されています。様々なプロデューサーがVOCALOID, CeVIO, SynthV, VOICEROIDなどのプログラムを使用し、自分の音楽に合ったボーカルを作り上げています。「偽の声がどう人間に勝るのか?」「ロボットなんかに本物の歌手の代わりが務まるはずがない」と言う人は少なくないかもしれません。しかしこのテクノロジーはすでに10年以上世間に広まっており、今では懸念の原因ではなく、クリエイティビティを代表するコミュニティアイコンとなっています。
大半の言う通り、本物の歌手の代わりにはなりません。しかしバーチャル歌手にはバーチャル歌手の役目があります。人気であれ、まだ始めたてであれ、シンセサイズされたボーカルはデジタル音楽プロデューサーにとって有効な代替手段です。いつでも利用ができ、通常は1回限りの購入で無限に使用でき、適切と思われるスタイルに合わせカスタムできます。人間と間違われるほどリアルなボーカルなど、魅力的なまでにロボットのようなボーカルまで、さまざまなシンセサイザーサウンドがあります。あなたにぴったりの音を見つけてください。
他に音楽家の目に止まるような魅力があるとすれば、それは音楽プロデューサーとボーカルシンセの間に生まれる絆でしょう。自身の作品の全てにスポットライトを当てるのではなく、バーチャル歌手は裏のクリエイター達を代表する存在となっています。主流の音楽の多くは歌手のみに曲の称賛を与えますが、ボーカルシンセシスのコミュニティはボーカルだけでなく、裏で曲を作るソングライターも認められる様に長い時間をかけて発展してきました。
観客からすれば、ボーカルシンセと音楽プロデューサーの間には大きな違いがあります。様々な音楽プロデューサーが同じボーカルシンスを使用したとしても、使い方によっては全く別の音になります。このスタイル、チューニング、ジャンルの違いが各プロデューサーに個性を与え、観客にクリエイターを覚えてもらう理由を与えます。
MIKU EXPO 2021で行われたソングコンテストではSCONE という西洋プロデューサーが「virtualscones」としてランナーアップを務めました。とあるインタビューで彼女はボーカルシンセとの関係を語りました。「声と性格は彼らのですが、歌詞は私自身のものです。」彼女の曲の顔は彼らですが、彼女はそれを悪いこととは思っていません。「私は彼らを仕事のパートナーだと思っており、自分に自信がない時は彼らの後ろに隠れるのがとても居心地がいいんです。」彼女はさらに自分で購入したVOCALOIDの鏡音リンや鏡音レンを例に使いました。「私はこの鏡音兄弟の若くて力強い声を聞いて、曲のテーマやアイデアを常にもらっています。彼らの年齢の若い子供達が興味を持っている「または」共通して経験しているテーマなどのアイデアがいっぱいもらえます。彼らは常に私の足を引っ張ってくれます。」最後に彼女はボーカルシンセシスがどの様に自分を表しているか語りました。「彼らは私のリンとレンであり、他のどのプロデューサーとも異なります。私は自分のボーカルシンセを通して会話します。自分の声が使えない時は彼らが私の声です。」
SCONEは以前、このお題にちなんだ曲を作りました。「speak.」という曲はVOCALOIDを使って感情を表しているプロデューサーを物語った曲です。ボーカルシンセはプロデューサーの歌を歌い表情を真似るが、それは結局ストーリーを伝えるための器でしかない。「私はVOCALOIDをそういうものだと信じています。」
バーチャル歌手がなぜここまで人気なのかがこれで良く分かります。音楽プロデューサーが腕で認められる中、ボーカルシンセは観客と共感する事で知られています。声とデザインがどう観客の目に入るかに寄って世間にとってどういう存在になるかが大きく変化します。
ボーカルシンセは音楽プロデューサーが使う楽器に過ぎないかもしれませんが、それに込められた個性はそれ以上の意味を持ちます。バーチャルアイドルのアバターは与えられた声だけではなく、コミュニティー全てを代表しています。シンセのために書かれた音楽、シンセのために描かれた絵、シンセを大切に思う人達が友達や家族とその愛を共有しあった時間― その全てが今のシンセを作り上げました。
ボーカルシンセは表現の1つです。ユーザーが個人の感情を表現するための器であり、ユーザーが感情を一人で抱え込まなくて済みます。それと同時にすでに存在する同じ熱意を共有するコミュニティと様々な繋がりが持てます。繊細な気持ちを描いた曲やアイデアを他の人に聞いてもらい、支援をいただくこともできます。素敵な絵を描くためのインスピレーションをもらい、見てくれた人に宣伝してもらえます。他人の作品を通し、人はキャラクターと繋がって行き、関係を繰り返して行きます。
バーチャルアイドルと普通の芸能人の間には決定的な違いがあります。それはカスタム力です。シンセで使用するキャラクターの全ては本来なら存在しない人物です。そのためユーザーはキャラクターを自由に変えることができます。みんながそれぞれの想像する真のアイドルを作るため、どのキャラクターのバリエーションも特別な物になります。ボーカルシンセの間違った使い方はありませんので、周囲の迷惑になるような使い方でなければどのように体験するかは個人の自由です。
そう思うと、ボーカルシンセは実はとても個性的なコミュニティで、様々なアーティスト、プロデューサー、そして熱心なファンで溢れています。テクノロジーだけではなく、それを使用する人達も含まれます。とあるインタビューで、MioDioDaVinciはコミュニティについて語ります。「兎にも角にも、ボーカルシンセシスの心と魂は音楽にあります。ボーカルシンセの「ファンダム」は他と違って、決まったクリエイターや制作チームはないけれど、コミュニティをスタート地点として、多くの才能を持つプロデューサーが集っています。」
ボーカルシンセシスのコミュニティでMioは印象的なVOCALOIDカバーと綺麗なイラストのミュージックビデオで有名です。オリジナルの曲はないものの「KYOユーザー」として評判を広めています。「全体を見た時に、このコミュニティが音楽プロデューサーだけで成り立っているものではないと分かるのが大事です。ファンやプロデューサーが音楽に対する愛を共有してコミュニティを気付きあげています。どのプロデューサーもファンなのです!そしてどんなファンでもコミュニティに加算しています!お互いに与え合って、小さなテクノロジーに対する感謝を持ち、成り立っている関係です。」
その後もコミュニティに属する人達の貢献を語りました。音楽、ビデオ、アート、文章、そして人と人の繋がりでさえ、ボーカルシンセの存在に加算しています。誰でもその一部になれるのです。「このようにファンやクリエイターが作り上げる現象が私の心に火を灯します。一人のプロデューサーが投稿を辞めたとしても、そのコミュニティは終わるわけではなく、どんどん続いていきます。どこまでも新しいものを作っていきます。」
彼らにとって、「少しでも個性を受け入れてくれる場所」はとても居心地の良い事です。「ボーカルシンセシスで得られる体験はメンタルが脆くなった時にいつでもあるので安心です。」この考えはコミュニティの多くの人が思っている事です。ボーカルシンセシスに慰めを求めるのは珍しいことではありません。「VOCALOIDは確かに私の人生に様々な影響を与えてくれます。ありがたいことにこれが私の唯一の生きる意味ではありませんが、ボーカルシンセのコミュニティメンバーである事は私が私である事に大きく関係します。」
結論、ボーカルシンセサイザーは音楽プロデューサーが唯一使える機能ではありませんが、観客の全てに影響するものではあります。人が個人の物語やアイデアを声で共有できる手段の一つです。バーチャル歌手はユーザーやコミュニティの思うがままに制作されます。インスピレーションや、自分のアイデアの研究や他人と繋がる手段、さらに精神が安定しない時に使う安定剤などとして活躍します。真の意味は人によって異なりますが、ボーカルシンセは人のために存在すると言うのは間違いないでしょう。
作: Mx. RuK
編集: Moonstar
スエーデン語翻訳: Nega Nexus
日本語翻訳: Jamiettt